この記事では高専生の進路について就職と進学の両方を経験した私なりの考えをまとめます。
大企業で総合職として活躍したいなら進学がおすすめ
大企業(特に大手メーカー)の場合、大学・大学院卒と高専・高卒とで採用を分けているケースが多く、このような場合、大学・大学院卒社員は将来管理職となることが期待されており、高専・高卒社員は実務者としての役割が期待されています。
キャリアパスも分けられており、前者は全国規模の転勤やジョブローテーションをしながら管理職(総合職)としての能力を高めていき、後者は一つの事業所で特定の業務に従事しながら実務能力を高めていきます。つまり、入社時の学歴と採用区分で将来のキャリアパスがほぼ決まっていると言えます。入社後に高専・高卒社員のキャリアパスから大学・大学院卒社員のキャリアパスに乗ることは努力や能力だけではなく余程の幸運がない限り困難です。
高専4年の後期から頑張って大学編入して、2年(大学院修士課程を含めると4年)大学に行くか行かないかで大企業におけるキャリアパスが大きく変わるので、総合職として活躍したいのなら進学しておくことをお勧めします。高専の教育カリキュラムは大学工学部に近い内容で、大学工学部卒業生に匹敵する知識・経験を持っているにも関わらず、後者の採用区分とキャリアパスではもったいないと感じます。
目的や状況によっては就職という選択肢もあり
「大企業で総合職として活躍する」という目的では進学一択ですが、もちろん人生はそれだけではありません。
例えば、「転勤せずに故郷でずっと暮らしたい」、「早く働いてすぐにお金を稼ぎたい」、「実務でしか身に着けることができない技術や技能を若いうちから習得したい」というように、進路を選ぶ目的は人それぞれですし、家庭の経済状況等も人それぞれです。目的や状況をしっかりと考えた上で就職を選ぶのもありだと思います。
「これ以上勉強するのが嫌だから」、「推薦で大企業に簡単に入れそうだから」、「周りが就職を選んでいるから」といった感じで「なんとなく就職する」と私のように後で後悔して大変な労力を使って進路を変える羽目になります。
進学のメリット
将来の仕事の選択肢が広がる
新卒、中途に関わらず企業や団体の募集要項において大卒を応募資格としている募集については、高専卒は原則として応募することはできません。また、大企業においては、大卒以上を総合職、それ以外を一般職と区別しているケースも多くみられます。したがって、進学によって大卒以上の学歴を得ることで将来選べる仕事の選択肢を広げることができます。
充実した環境で研究や勉強に打ち込める
大学では高専以上にキャンパスの施設や実験設備が充実しており、教授陣の層も厚いです。各研究分野の権威である教授陣から指導を受けながら充実した環境を活かしてより高度な内容の研究に打ち込むことができます。
例えば、私が進学した大学には、全長約80mの巨大な実験水槽があり、模型船を使った実験を行っていましたが、大学ならではの貴重な経験だったと思います。また、キャンパスも広大で、いくつもある図書館を活用して自習に打ち込むこともできました。
社会人になるまでの時間的な猶予を得ることができる
大学工学部においても授業やレポート、定期テストなどでそれなりに忙しくはありますが、編入学する3年次にもなると授業数は少なくなり、夏休みと春休みはそれぞれ約2か月もあることから自由に使える時間が高専よりも圧倒的に多いです。また、社会人になるまで少なくとも2年間の時間的猶予が得られるため、自由な時間を活用して勉強や研究以外の活動に取り組みながら、大学卒業後の進路についてじっくりと考えることができます。
私の場合は、これらの時間を人力飛行機(鳥人間コンテスト)のサークル活動や企業のインターンシップ、公務員試験への挑戦に活用することで進路選択や就職活動に活かすことができたと思います。
進学のデメリット
お金がかかる
大学への進学には当然お金がかかります。大学に収める入学金や授業料はもちろん、家賃や食費、光熱費など生活するだけでもどんどんお金がなくなっていきます。私の経験上、授業料免除や学生寮を活用して支出を抑えたとしても学部を卒業するまでの2年間で300万円弱を使いました。ちなみに、そのお金は高専卒で就職して2年間働いて貯めたお金だったので、高専卒で就職して働いていれば2年で300万円近く貯めることだってできます。
まとめ
以上のことから、お金がかかることを除けば、大学進学によって得られるメリットは数多くあります。逆に、就職して早く働くメリットはすぐにお金を稼ぐことができることを除いてはっきりと挙げることはできませんでした。社会人でなければ身に着けることができない技術・経験は数多くありますが、それらの大部分は大学を卒業してから身に着けても全く遅くはありません。しかしながら、早くから社会人経験を積み、新規事業を立ち上げたり独立を目指すといったような将来のビジョンや明確な目的を持っているのであれば、あえて就職を選ぶのはありだと思います。
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